「勤務形態の変化によって、年間20㎏肥満する可能性」

1.勤務形態の変化と肥満

 新型コロナウイルスの影響もあり、働き方が多様化し、出社せずに自宅で業務を行うリモートワークが認知された昨今、そのメリットとしては

  • 通勤、移動に費やしていた時間の有効活用
  • 満員電車などの通勤ストレスの解消

が挙げられますが、デメリットとして

  • 通勤やオフィス内での移動による身体活動量の低下

が挙げられます。

 

 実際に私のクライアント様も、新型コロナウイルス流行初期、リモートワークへの変化とフィットネスクラブが休館によって、3か月間で3㎏程度体重が増加する方がいらっしゃいました。

大原則として

  • 体重維持=消費カロリー = 摂取カロリー
  • 減量=消費カロリー>摂取カロリー
  • 増量=消費カロリー<摂取カロリー

となる為、身体活動量の低下により1日の消費カロリーが低下してしまう事は、肥満や生活習慣病のリスクとなります。

では、実際にどのぐらい消費カロリーが低下するのか。厚生労働省が作成した「推定エネルギー必要量」をみれば一目瞭然です。

 ここでいう身体活動レベルが「Ⅰ」がまさにリモートワークをしている時の消費カロリーとなり、「Ⅱ」がオフィスに通勤しているデスクワーカーの消費カロリーとなります。

 例えば40代の男性の場合、身体活動量が「Ⅱ」の場合と「Ⅰ」の場合では消費カロリーの差は400kcalとなります。仮に身体活動量が「Ⅱ」の方の食生活が、体重を維持するレベル摂取カロリーだった場合、その食生活を維持したまま身体活動量が「Ⅰ」になると、毎日400kcal摂取カロリーが消費カロリーをオーバーしていき、年間で146,000kcalにも及びます。体脂肪は1kgあたり約7,200kcalと言われているので、この生活を続けていくと、計算上は1年間で約20kg体脂肪量が増加することとなり、上述したように肥満や生活習慣病のリスクとなる事は間違いありません。

 では、身体活動量が低下してしまった場合にはどの様な事に気をつける必要があるのかをお伝え致します。

 

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

2.食生活の見直し・改善

 まず一番取り組みやすく、結果が出やすいアプローチとして、食生活の見直し・改善が挙げられます。

その中でも特に効果的な事が、脂質の摂取量の見直し・改善をする事です。

 ヒトがエネルギーとして摂取できるものには糖質、たんぱく質、脂質があり、糖質とたんぱく質は1g=4kcal、脂質は1g= 9kcalとなります。

つまり、脂質は少量で高カロリーとなるので、揚げ物や炒め物などの調理、加工で油を使っているものを選ばないように心がけると、一気に摂取カロリーを減らす事ができます。

 

 その他にも厚生労働省と農林水産省の共同で作成された「食事バランスガイド」で説明させて頂くと、牛乳・乳製品や、主菜を肉から選択した場合、比較的脂質が多く含まれる為、注意が必要となります。

また、主食の炭水化物に含まれるブドウ糖は脳や神経、筋肉のエネルギーとなる為、最低でも720kcal(茶碗3杯弱のごはん)にあたるエネルギー量は摂取する必要があり、過剰な制限をしてしまうと代謝やパフォーマンスの低下に繋がります。しかし、お菓子や清涼飲料水に含まれる果糖は中性脂肪に変わりやすい性質がある為、避けた方が無難な食品です。

 

 そして、食事バランスガイドには掲載されていませんが、アルコールは解毒されるまで、おつまみとして摂取した食品のエネルギーが蓄積しやすくなるので、量や頻度の管理や一緒に食べるおつまみなどの管理が必要となります。

食事バランスガイド

3.運動でエネルギー消費量を増やす

 肥満、生活習慣病を防ぐためには2でお伝えさせて頂いた、食生活の見直し、改善が最も効果的ですが、健康的な身体を維持していくとなると、運動を習慣化する事も非常に大切です。運動には大きく分けて、筋力トレーニングと有酸素運動の2種類があり、どちらをやるかで得られる効果に違いがあります。

  • 筋力トレーニングで得られる効果

 筋力トレーニングは筋肉量の維持、向上に効果的です。人間は何もしなくても、生命や身体機能を維持する為にエネルギーを消費します。これを基礎代謝と言い、その60%のエネルギーは筋肉が消費すると言われています。つまり、筋力トレーニングを行なって筋肉量を増やす事で基礎代謝による消費エネルギーを増やすことが期待できます。また、筋肉は車で言うところのエンジンにあたり、運動の際にたくさんのエネルギーを利用してくれるので、それを大きくする事によって運動時の消費エネルギーを高め、肥満しにくい身体を作り上げていく事にも繋がります。

  • 有酸素運動で得られる効果

有酸素運動は運動時の消費エネルギーとして、糖質や脂質を利用し、運動時間が長くなればなるほど、脂質の利用効率が増えていきます。つまりやればやっただけ、直接的に体脂肪を減らしていく事ができる為、特に体脂肪を落としたい時には、取り入れていきたいエクササイズとなります。

 

4.おわりに

 いかがでしょうか?勤務形態によるエネルギー消費量の違いの積み重ねによって、肥満や生活習慣病のリスクが高くなる事を想像して頂けたのではないかと思います。今回はそれを避ける為の食事面と運動面のアプローチをお伝えさせて頂きました。健康管理は日々の積み重ねが大切です。高すぎる目標設定は挫折を招いてしまう事があり、継続できない方の多くがこのケースに該当します。そのため、まずは確実に出来る事から実践して頂く事をオススメ致します。

 

 ひとつひとつ課題をクリアしていく事が自信となり、いつの間に色々な事が習慣化し、気がついたら健康的な生活を手に入れる事が出来ている・・・健康管理は一生続けていく必要がある為、そのように獲得していく方法がベストなのではないかと思います。

もし一人で取り組むのが難しい場合は、取り組み方を学ぶために、栄養指導もできるトレーナーのパーソナルトレーニングを一定期間受けることをご検討して頂くと良いかと思います。

 

 今回の記事が、読んでくださった方の健康に役立つものであったら幸いです。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


石沢 直之(いしざわ なおゆき)パーソナルトレーナー

 

 大手フィットネスクラブにて、パーソナル指導、トレーナースタッフ育成を中心にトレーナーとしての指導に従事した後、都内の大手パーソナルトレーニングスタジオに転職、店長として勤務しながらも月間120セッション以上実施し、スポーツ選手や芸能人・モデル等をクライアントとして指導した経験を持つ。

 現在はパーソナルトレーナーとして活動する傍ら

・指導者向けセミナー講師

・専門学校非常勤講師(栄養学)

・各種トレーニングイベント企画

・パーソナルトレーナー養成

・web記事執筆

などの分野でも活動中。


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