『育休取得』で終わらせない。男女ともにキャリアを止めない「育業」時代の両立支援とは

この記事のポイント

  • 育休取得率向上の一方で深刻化する、復職後の「キャリアの壁」という本当の課題がわかります。
  • 男女それぞれのキャリアを止めないための「コミュニケーション」「評価制度」「意識改革」という3つの仕組みを具体的に学べます。
  • 時間制約のある社員への公正な評価方法や、他の社員の「不公平感」を解消するヒントが得られます。

近年、男性の育児休業取得率は着実に向上し、多くの企業で両立支援制度が整備されてきました。しかし、その一方で新たな課題が浮き彫りになっています。

それは、育休からの**「復職後」にキャリアが停滞してしまう問題**です。育児をすることは、決してキャリアの「休み」ではありません。むしろ、多様な視点やタイムマネジメント能力を養う貴重な「業(わざ)」と捉えるべき時代です。

この記事では、単なる「育休」で終わらせず、男女ともにキャリアを継続させる**「育業」**時代の両立支援について、企業が取り組むべき具体的な仕組みを専門家の視点で解説します。

なぜ「復職後の壁」が生まれるのか?男女それぞれのリアル

制度はあっても、その後のキャリアに不安を感じる社員は少なくありません。男女それぞれが直面する、リアルな課題を見ていきましょう。

女性社員の課題:見えないキャリアの行き止まり「マミートラック」
「時短勤務だから重要な仕事は任せてもらえない」「昇進はもう無理だろう」といった空気を感じ、やりがいを失ってしまうケース。本人の意欲とは裏腹に、補助的な業務に追いやられ、キャリアアップの道から外れてしまう問題です。

男性社員の課題:キャリアへの不安と「取るだけ育休」
「育休を取ったら評価が下がるのでは」「同僚に迷惑をかける」といった心理的障壁は依然として存在します。また、単に制度を利用するだけで、育児・家事への主体的な関与や、復職後の働き方の見直しに繋がらず、形骸化してしまう「取るだけ育休」も課題です。

「育業」を成功に導くための3つの仕組み

仕組み①:休業前後の「コミュニケーション」をデザインする

不安やすれ違いを防ぐには、節目ごとの丁寧な対話が不可欠です。場当たり的な面談ではなく、会社の仕組みとして設計しましょう。

  • 【休業前】キャリア面談の実施:業務の引継ぎだけでなく、上司も交えて「復職後にどんな役割を担いたいか」「キャリアをどう築きたいか」を話し合い、本人の意欲と会社の期待をすり合わせます。
  • 【休業中】孤立させない情報共有:社内報やチャットツールなどで会社の動向を共有し、スムーズな復帰をサポートします。
  • 【復職後】定期的な1on1:仕事と育児の両立状況や悩み、キャリアの意向を継続的にヒアリングし、必要に応じて業務内容や働き方を柔軟に調整します。

仕組み②:「時間制約」をハンデにしない評価制度と働き方

「短い時間で働く=評価が低い」という考え方から脱却する必要があります。

  • 成果主義の評価制度へ:「何時間働いたか」ではなく、「どんな成果を出したか」を公正に評価する仕組みを構築・周知します。これにより、短時間勤務者も納得感を持って働けます。
  • 時間と場所の柔軟性:子供の急な発熱や行事にも対応しやすいよう、テレワークやフレックスタイム制度を積極的に活用できる文化を醸成します。これは全社員の生産性向上にも繋がります。

仕組み③:管理職と全社員の「意識改革」

最も重要なのが、制度を支える「文化」です。

  • 管理職への研修:育児中の部下の心理や、適切なマネジメント方法(業務の割り振り、声かけなど)について学ぶ研修を実施し、マネジメントの質を向上させます。
  • 「お互い様」の文化醸成:経営層から「子育て支援は会社の重要な方針である」と明確に発信し、育児に限らず、誰もが困難な状況になったときには支え合うのが当たり前という「お互い様」の風土を作ります。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 育児をしていない社員から「時短勤務者ばかり優遇されて不公平だ」という声が上がらないか心配です。

A. 非常に重要な視点です。対策として、①時間ではなく成果で評価する公正な評価制度の導入、②カバーする側の社員の貢献を正当に評価し、賞与や昇格に反映させること、③育児だけでなく介護や自己研鑽など、全社員がライフステージに応じて柔軟な働き方を選択できる制度設計を目指すことが有効です。「あの人だけ」ではなく「誰でも使える」制度にすることが不公平感をなくす鍵です。

Q. 短時間勤務の社員に、どこまでの業務を任せてよいか判断が難しいです。

A. まずは本人の意欲を確認することが第一歩です。「キャリアプラン面談」などを通じて、本人がどのような仕事に挑戦したいのかをヒアリングしましょう。その上で、責任ある業務も「役割を細分化する」「チームで担当する」などの工夫で任せることが可能です。時間制約を理由に最初から重要な業務から外すのではなく、「どうすれば任せられるか」を本人と一緒に考える姿勢が管理職には求められます。

従業員の「育業」は、組織を強くする成長機会です

育児と仕事の両立支援は、単なる福利厚生ではありません。
多様な人材が安心して能力を発揮できる組織文化を育み、企業の持続的成長を支える「経営戦略」です。
「管理職の意識改革を進めたい」「自社に合った両立支援の仕組みを考えたい」
ウェルネスドアでは、各企業の課題に合わせた実践的な両立支援セミナーをご提供します。

【免責事項】
本記事は、両立支援に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的・専門的な助言を行うものではありません。具体的な制度設計や個別事案への対応については、必ず社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

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