2025年度〜2029年度 適用
「食事摂取基準」と聞くと、管理栄養士や医療従事者のための専門資料というイメージがあるかもしれません。
しかし、2025年版の改定内容はすべての働く人の食生活に直結する変更を多く含んでいます。
骨粗鬆症の追加、ビタミンDの引き上げ、食物繊維目標量の見直し──。
この記事では、改定のポイントを7つに整理し、「結局どう食べればいいの?」という疑問に答えます。
企業の健康経営・食育施策へ活かすヒントも、あわせてお届けします。
「日本人の食事摂取基準」は、健康増進法に基づき厚生労働省が策定する公的な食事ガイドラインです。
国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防を目的に、エネルギー及び34種類の栄養素について、摂取量の基準値を示しています。
一般の方にとっては「毎日の食事でどの栄養素をどれくらい摂ればいいか」を知るための最も信頼性の高い「ものさし」です。
2020年版からの主な変更点を、7つのポイントに整理しました。
2020年版の対象疾患は、高血圧・脂質異常症・糖尿病・CKD(慢性腎臓病)の4疾患でした。
2025年版では骨粗鬆症が5つ目の対象疾患として追加されました。
なぜ重要?
高齢化社会の進展に伴い、骨折→要介護のリスクがクローズアップされています。食事摂取基準が「メタボ予防」だけでなく「骨の健康=生活機能の維持」を明確に射程に入れた、大きな転換点です。カルシウム、ビタミンD、たんぱく質、低体重との関連が整理されています。
18歳以上のビタミンD目安量が 8.5 μg/日 → 9.0 μg/日 に引き上げられました。
改定の背景:骨密度維持に重要な血中25-ヒドロキシビタミンD濃度の参考値が整理されました。日本人は日照不足や魚離れにより、ビタミンDが慢性的に不足しやすいとされています。
食品例:サケ・サンマなどの魚類、卵黄、きのこ類、+適度な日光浴(1日15〜30分)
成人の食物繊維目標量が年齢区分ごとにきめ細かく設定されました。
| 年齢区分 |
2020年版 (男/女 g/日) |
2025年版 (男/女 g/日) |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | 21以上 / 18以上 | 21以上 / 18以上 |
| 30〜49歳 | 21以上 / 18以上 | 22以上 / 18以上 |
| 50〜64歳 | 21以上 / 18以上 | 22以上 / 18以上 |
| 65〜74歳 | 20以上 / 17以上 | 20以上 / 17以上 |
| 75歳以上 | 20以上 / 17以上 | 20以上 / 17以上 |
現実とのギャップ:国民健康・栄養調査(令和元年)による実際の摂取中央値は約13〜15g/日。目標量に対して5〜8g不足している状況です。WHOも成人の食物繊維摂取量として25g/日以上を推奨しており、意識的に増やすことが重要です。
食事からの鉄摂取では健康障害の報告が見当たらないとの判断から、耐容上限量(UL)が撤廃されました。
注意:あくまで「通常の食品からの摂取」が対象。サプリメントや鉄剤での過剰摂取には引き続き注意が必要です。特に、鉄過剰とヘモクロマトーシスのリスクは変わっていません。
従来の尿中排泄量に基づく方法から、赤血球中のトランスケトラーゼ活性を指標とする方法に変更。生体指標(バイオマーカー)を活用した、より科学的根拠に基づいた基準値となりました。
2020年版では「推定平均必要量(EAR)・推奨量(RDA)」が設定されていましたが、科学的根拠の再評価により「目安量(AI)」に変更されました。対象となる母集団の摂取データから、十分な摂取量が確保されている状態を基に算定しています。
表記が「Ⅰ(低い)・Ⅱ(ふつう)・Ⅲ(高い)」から「低い」「ふつう」「高い」のシンプルな日本語表記に変更。
数値変更:
65〜74歳:低い 1.45 → 1.50、高い 1.95 → 1.90
75歳以上:ふつう 1.65 → 1.70
高齢者のエネルギー必要量の推定に影響するため、給食管理や栄養指導で確認が必要です。
💡 専門家の視点:基準は「ものさし」であり、「ルール」ではない
食事摂取基準は「毎日1g単位で守らなければならないルール」ではありません。
自分の食生活を振り返り、不足しやすい栄養素や偏りに気づくための「ものさし」です。
法人支援の中で、健康セミナーで最も反響が大きいのが食生活のテーマ。
「知っていたつもり」が「実は違った」に変わる瞬間に、行動変容が始まります。
改定内容を踏まえて、「結局、何をどう変えればいいのか?」を5つの切り口でまとめました。
🌾
白米 → 雑穀米に変える、味噌汁にきのこ・わかめを足す、もう1品に豆・海藻の小鉢を追加。コンビニならもずく酢やごぼうサラダが手軽です。
☀️
週3回はサケ・サバ・サンマなどの魚を主菜に。卵やきのこ類も日常的に。加えて、1日15〜30分の日光浴(手の甲や顔が触れる程度)で体内合成を促進。
🍖
毎食、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のいずれかを1品確保。特に朝食でたんぱく質が不足しがち。ヨーグルト・卵・納豆がお手軽です。
🦴
カルシウム + ビタミンD + 適度な運動の3点セット。牛乳・小魚でカルシウム、魚・きのこでビタミンD、ウォーキングや筋トレで骨に刺激を与える。
🧓
食欲が落ちやすい高齢者は、少量でもたんぱく質を意識して摂ることが重要です。おかずが減りやすい昼食に卵焼き・豆腐・チーズをプラスする工夫が効果的。低体重(BMI 20未満)はフレイルや骨折のリスクを高めます。
健康経営優良法人の認定項目には「食生活の改善に向けた取り組み」が含まれています。
食事摂取基準の改定内容を反映することで、施策の質と説得力が向上します。
| 活用シーン | 具体的なアクション例 |
|---|---|
| 食育セミナー | 「2025年版で何が変わった?」をテーマに、管理栄養士監修の全社セミナーを開催。コンビニランチでの実践例も紹介 |
| 社食・自販機の改善 | 食物繊維・ビタミンDを意識したメニューをハイライト。カロリー表示に加え「食物繊維●g」「たんぱく質●g」の見える化 |
| 健診結果と連動 | 骨密度検査、脂質異常の有所見者に、食事摂取基準を根拠とした食事アドバイスを個別フィードバック |
| 食事チャレンジイベント | 「1週間で食物繊維+5gチャレンジ」「朝食にたんぱく質を摂ろうウィーク」など、短期間・低コストで実施可能 |
食生活改善とプレゼンティーイズムの関係:
朝食欠食は午前中のパフォーマンス低下に直結し、偏った食事は倦怠感・集中力低下の原因になります。食事改善はプレゼンティーイズム(出勤しているがパフォーマンスが低下している状態)の改善に最も低コストで取り組める施策の一つです。
💡 専門家の視点:「何を食べるか」より「何を足すか」
食生活改善セミナーは、健康経営の施策の中で最も参加率が高いテーマの一つです。
「何を食べればいいか」ではなく「今の食事に何を足すか」。
この問いの転換が、忙しいビジネスパーソンの行動変容の鍵です。
当社では、コンビニランチでも実践できる栄養バランスの取り方など、現実的なアプローチを重視した食事セミナーを提供しています。
制限ではなく「選び方」を変える。それが継続の秘訣です。
Q. 基準を全部守れないと意味がありませんか?
いいえ。食事摂取基準は「習慣的な摂取量の目安」であり、1日ごとに厳密に守るものではありません。1週間〜数週間単位で「だいたいこの範囲」を意識することが大切です。完璧を目指すと続かないので、できることから1つずつ始めましょう。
Q. サプリメントで補えばよいのでしょうか?
基本は食事から摂取することが原則です。食事には栄養素だけでなく、食物繊維やフィトケミカルなどサプリメントでは補いにくい成分が含まれています。ただし、ビタミンDなど食事だけでは不足しやすい栄養素については、医師や管理栄養士に相談の上でサプリメントを活用することも選択肢の一つです。
Q. 持病がある人も、この基準をそのまま使ってよいですか?
食事摂取基準は健康な人および生活習慣病の予防を目的として策定されています。糖尿病、腎臓病、高血圧などで食事療法を行っている方は、主治医や管理栄養士の指示が優先されます。基準値とは異なる栄養素の制限・調整が必要な場合があります。
食事は毎日のことだからこそ、「ちょっとした知識」が行動を変え、長期的な健康を支えます。
この記事が、あなたの食生活と、職場の健康施策を見直すきっかけになれば幸いです。
「コンビニランチ×栄養バランス」「忙しい人のための食習慣改善」など
現場で使える食事セミナーをご用意しています。
狩野 学(かりの まなぶ)
ウェルネスドア合同会社 代表。約18年間、フィットネス・健康領域で現場支援に携わった後、2018年より法人向け健康経営支援を本格展開。食生活改善セミナー、運動施策、ストレスケアまで一気通貫で支援。「現場で使える健康情報」の発信を専門とする。
【参考文献・出典】
「最近、健康診断の結果が気になり始めた…」
「結局、何をどれくらい食べれば健康にいいの?」
日々の健康を支える「食事」について、関心をお持ちの皆さま、こんにちは。
ウェルネスドア合同会社です。
私たちの健康づくりの基準となる「日本人の食事摂取基準」は、厚生労働省が5年ごとに見直している公的な指針です。現在の最新版は「2025年版」で、2025年度から2029年度まで使用されます。
今回の改定では、単なる栄養素の数字の見直しだけでなく、骨粗鬆症の追加、食物繊維・ビタミンDの再整理、高齢者・フレイル予防の視点など、現代の健康課題を踏まえたアップデートが行われました。
この記事では、最新の公式資料をもとに、2025年版で押さえるべき変更点と、明日から実践できる食事の工夫を分かりやすく解説します。
【そもそも】日本人の食事摂取基準とは?
厚生労働省が、健康増進法に基づいて定める、エネルギーや各栄養素の摂取量の基準です。国民の健康の保持・増進、生活習慣病の発症予防を目的としており、医療・介護・給食・保健指導など、幅広い現場で活用される「健康づくりの土台」といえます。
Q. 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で、特に注目したいポイントは何ですか? A. 一つだけではありません。 今回は、骨粗鬆症が新たに追加されたこと、食物繊維の目標量の見直し、ビタミンDの目安量アップ、そして高齢者のフレイル予防を意識したたんぱく質の考え方が重要です。
今回の改定は、「数値が少し変わった」というだけではありません。健康日本21(第三次)の方向性も踏まえ、生活習慣病予防に加えて、生活機能の維持・向上も意識した構成に変わっています。
2025年版では、「生活習慣病及び生活機能の維持・向上に係る疾患等とエネルギー・栄養素との関連」の章に、骨粗鬆症が新たに加わりました。これは、高齢化が進む中で、骨折や要介護リスクの予防が重要になっていることを反映した変更です。
これにより、食事摂取基準は「メタボ予防」だけでなく、将来の生活機能を守るための栄養管理という意味合いも、より強く持つようになりました。
食物繊維は、今回も重要なテーマです。ただし、ここで注意したいのは、SNSや解説記事で見かける「男性25g/日」という表現が、そのまま日本人の食事摂取基準の公式数値ではないことです。
2025年版の目標量は年齢によって異なり、成人男性では20~22g/日程度、成人女性では18g/日前後が中心です。さらに、食物繊維は食品成分表の測定法変更の影響もあるため、前回版との単純比較だけで理解しないことが大切です。
とはいえ、多くの人が十分に摂れていないという問題意識は変わりません。野菜、豆類、きのこ、海藻、果物、全粒穀物を組み合わせ、まずは今より一皿増やすことが現実的な一歩です。
ビタミンDの目安量は、18歳以上の男女で8.5μg/日から9.0μg/日に引き上げられました。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨の健康維持に関わる重要な栄養素です。
特に高齢者では、加齢により皮膚でビタミンDを作る力が低下しやすく、屋外活動が少ないと不足しやすくなります。そのため、魚類、卵、きのこ類を食事に取り入れることに加え、可能な範囲での日光曝露も意識したいところです。
2025年版では、高齢者についてフレイル予防の観点がより明確に意識されています。フレイルとは、健康と要介護の中間にあたるような状態で、筋力低下、活動量低下、体重減少などが進むと、転倒や要介護のリスクが高まります。
そのため、高齢者では食事量が落ちてしまった結果、たんぱく質不足にならないことが重要です。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などを、できるだけ毎食いずれか取り入れることが大切です。
ただし、腎機能低下などの病気がある場合は、一般向け基準だけで自己判断せず、医師や管理栄養士に相談することが必要です。
Q. 新しい基準は難しそうですが、簡単に実践するコツはありますか? A. 完璧を目指さず、「いつもの食事に一品足す」ことから始めるのがコツです。 例えば、食物繊維なら豆や海藻の小鉢、ビタミンDならきのこ入り味噌汁、たんぱく質なら朝食にヨーグルトや卵を足す、といった工夫が続けやすい方法です。
食事摂取基準は、毎日1g単位で完璧に合わせるためのものではありません。むしろ、自分の食生活を振り返り、不足しやすい栄養素や偏りに気づくための基準と考えると、日常に活かしやすくなります。
Q. 基準を全部守れないと意味がありませんか?
A. そのようなことはありません。食事摂取基準は「習慣的な摂取量」の目安です。毎日完璧でなくても、1週間、1か月の中で少しずつ整えていく考え方が現実的です。
Q. サプリメントで補えばよいのでしょうか?
A. 基本は食事からの摂取が望まれます。サプリメントは補助として使える場合がありますが、過剰摂取や自己判断には注意が必要です。特に脂溶性ビタミンやミネラルは、体質や疾患によって配慮が必要になることがあります。
Q. 病気がある人も、この基準をそのまま使ってよいですか?
A. 食事摂取基準は、健康な人またはおおむね自立した生活を送る人を主な対象としています。糖尿病、腎臓病、脂質異常症などがある場合は、治療ガイドラインや個別指導が優先されます。
「自分の食生活の課題を具体的に知りたい」
「従業員向けに、最新基準に基づく栄養セミナーを実施したい」
そんなご要望に、ウェルネスドアの管理栄養士・専門家チームがお応えします。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。個人の健康状態や病状に応じた食事内容は異なります。持病がある方、治療中の方、栄養制限がある方は、かかりつけ医や管理栄養士にご相談ください。
【主な公式情報】
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
※本記事は、2026年3月22日時点で確認できる最新の公式公表資料に基づいて作成しています。
「最近、健康診断の結果が気になり始めた…」
「結局、何をどれくらい食べれば健康にいいの?」
日々の健康を支える「食事」について、関心をお持ちの皆様、こんにちは!
ウェルネスドア合同会社です。
5年に一度、私たちの健康づくりの指針となる「日本人の食事摂取基準」が改定されるのをご存知ですか? 2025年度から新しく適用される「2025年版」では、現代人の健康課題に合わせていくつかの重要な変更が加えられました。
この記事では、管理栄養士や健康経営の専門家が、最新の「食事摂取基準」の変更ポイントと、明日から実践できる食事のコツを分かりやすく解説します。
【そもそも】日本人の食事摂取基準とは?
厚生労働省が、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために、エネルギーや各栄養素の摂取量の目安を科学的根拠に基づいて示したものです。給食や食品開発など、様々な場面で活用される「健康の羅針盤」と言えます。
Q. 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の最も重要な変更点は何ですか? A. 最も大きな変更点は「食物繊維」の目標量が大幅に引き上げられたことです。これに加え、「ビタミンD」の目安量アップや、「高齢者のたんぱく質」摂取の重要性がより強調されるなど、現代人の健康課題に合わせた見直しが行われました。
今回の改定では、特に私たちの食生活に直結する重要な変更がありました。ポイントを絞って見ていきましょう。
Q. 新しい基準は難しそうですが、簡単に実践できるコツはありますか? A. はい、完璧を目指さず「いつもの食事に一品プラス」から始めるのがコツです。例えば、食物繊維なら「納豆1パック追加」、ビタミンDなら「味噌汁にきのこを追加」、たんぱく質なら「朝食にヨーグルトを追加」するなど、手軽にできることから試してみましょう。
Q. 基準が厳しくなったようで、全部守れる自信がありません…
A. ご安心ください。食事摂取基準はあくまで「目標」であり、毎日完璧に達成する必要はありません。まずは今回の変更点で挙げた「食物繊維」「ビタミンD」「たんぱく質」のうち、ご自身に一番足りていなそうなものを一つ選び、意識して食事に取り入れることから始めてみましょう。「昨日は野菜が少なかったから、今日はお惣菜でひじき煮を足そう」といった形で、1週間単位でバランスを整えるのが長続きのコツです。
Q. サプリメントで補っても良いのでしょうか?
A. 基本は食事から摂ることが理想です。食品にはビタミンやミネラルだけでなく、食物繊維やポリフェノールなど、複合的な栄養素が含まれているからです。しかし、食事が不規則になりがちな時や、特定の栄養素が不足しがちな場合の補助として、サプリメントを上手に活用するのは有効な手段です。利用する際は、過剰摂取にならないよう、製品に記載された目安量を必ず守りましょう。
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【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としています。個人の健康状態や病状に応じた食事については、かかりつけの医師や管理栄養士にご相談ください。
【公式情報】
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」