健康経営の「見えないコスト」を可視化する方法|シミュレーターで経済的損失を算出

この記事のポイント

  • 「健康経営の重要性」を、経営層が納得する具体的な「経済的損失額」として提示する必要性がわかる。
  • シミュレーターを使い、自社の情報に基づいた「見えないコスト」の総額を即座に算出できる。
  • 算出された数値を武器に、健康経営を「コスト」から「戦略的投資」として提案するための具体的なストーリー作りが学べる。

「健康経営は重要だ」…その一言で、施策の予算は獲得できるでしょうか?

多くの担当者が「重要性は理解されているはずなのに、なぜか予算が承認されない」という壁に直面します。その最大の理由は、健康経営の価値を、経営層が最も重視する**「客観的で具体的な“数字”」**で示せていないからです。この記事では、従業員の不調がもたらす経済的損失、すなわち「見えないコスト」を可視化し、それを武器に経営層を説得する方法を解説します。

第1章:会社を静かに蝕む、2つの「見えないコスト」とは?

従業員の健康問題が引き起こす経済的損失は、大きく2つに分類されます。

1. アブセンティーイズム(休むコスト)

病気で従業員が欠勤することによる損失です。休んだ従業員への賃金支払いはもちろん、周囲の従業員がその業務をカバーすることによる負担増や生産性低下といった「間接コスト」も発生します。

2. プレゼンティーイズム(出社しているが不調のコスト)

頭痛や肩こり、軽いうつ気分など、何らかの不調を抱えながら出社し、本来のパフォーマンスを発揮できないことによる損失です。このプレゼンティーイズムは、アブセンティーイズムの数倍の経済的損失を生む「最大のコスト」と言われています。

これらのコストを可視化することで、初めて健康経営は「福利厚生のコスト」ではなく、「将来のリスクを抑制し、利益を生み出すための**戦略的投資**」として、経営の土俵で議論できるようになるのです。

第2章:【実践】あなたの会社の「見えないコスト」を今すぐ可視化する

以下のツールは、WHO(世界保健機関)や東京大学の研究アプローチを参考に、貴社の「見えないコスト」を簡易的に算出するシミュレーターです。自社の状況を入力し、具体的な損失額を把握してみましょう。

「見えないコスト」
可視化シミュレーター

従業員の心身の不調による経済的損失額を簡易的に算出します。
健康経営への投資がいかに重要か、具体的な数値で把握しましょう。

第3章:数字が語る、あなたの会社の健康課題

シミュレーションお疲れ様でした。算出された「合計損失額」は、予想以上の金額だったかもしれません。この数字を正しく理解し、次の一手につなげるためのポイントを解説します。

  • 損失額のインパクトを理解する:算出された金額は、貴社が「何もしなかった場合」に、従業員の健康問題によって失われ続けるコストです。これは、新たな設備投資や人材採用に回せたはずの、貴重な経営資源に他なりません。
  • 損失の内訳に注目する:多くの場合、「プレゼンティーイズム損失」が合計の大部分を占めているはずです。これは、単に「休んでいる人」を減らすだけでなく、**「不調を抱えながら働いている人」のパフォーマンスをいかに引き上げるか**が、生産性向上における最重要課題であることを示しています。
  • 業務特性と結びつけて考える:結果に表示された業務タイプ別のコメントの通り、デスクワーク中心ならメンタルヘルス対策、身体労働中心なら労災防止など、自社の事業特性に合わせた施策が、より高い投資対効果を生みます。

第4章:数字を武器に、経営層を動かす次の一手

算出された「見えないコスト」は、経営層を説得するための強力な武器です。この客観的なデータを基に、次のようなストーリーで健康投資を提案しましょう。

【提案ストーリー例】

「現在、当社の従業員の健康問題による年間経済的損失は、年間約〇〇万円と試算されます。特に、生産性低下による損失(プレゼンティーイズム)がその大半を占めています。

そこで、年間〇〇万円を投資し、〇〇という健康施策を実施します。これにより、まずはプレゼンティーイズム損失の10%にあたる〇〇万円の削減を目指します。これは、コストではなく、将来の生産性を確保するための戦略的投資です。」

まとめ:「見えないコスト」の可視化から、戦略的な健康投資へ

健康経営を“掛け声”だけで終わらせないためには、その価値を具体的な「数字」で語ることが不可欠です。「見えないコスト」を可視化することは、健康経営をデータに基づいた経営戦略へと昇華させるための、最も重要な第一歩と言えるでしょう。

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【監修】
ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学(かりの まなぶ)
エキスパートインサイト 専門家チーム