「健康経営が重要だとは聞くが、結局コストがかかるだけで、本当に儲かるのか?」
多くの経営者が抱くこの疑問に、今回はデータを用いて真正面からお答えします。「健康経営はコストがかかる」というイメージを払拭し、「企業の成長に不可欠な投資」であることを論理的に解説します。
まず、客観的な事実として、健康経営優良法人の認定数は全国で急増しています。2023年から2024年にかけて、中小規模法人部門だけでも認定数は14,012社から16,733社へと約1.2倍に増加しました。これは、多くの経営者がその重要性に気づき、具体的なアクションを起こしている証拠です。
では、彼らはなぜ投資を続けるのでしょうか?その答えは、健康経営がもたらす明確なリターンにあります。
最も重要なデータからお見せします。当社の調査によると、健康経営優良法人の認定を受けている企業は、受けていない企業に比べて売上高増加率の中央値が約1.5倍高いという結果が出ています。
認定企業:3.7% vs 非認定企業:2.4%
※帝国データバンク「健康経営に関する企業の取り組み状況や効果に関する調査分析」より
これは、健康経営が単なる福利厚生ではなく、企業の成長エンジンとして機能していることを示す強力な証拠です。では、なぜこのような差が生まれるのでしょうか?その答えが次の2つの根拠です。
企業の成長は、従業員一人ひとりの活力から生まれます。健康経営に取り組む企業では、以下のようなポジティブな効果が報告されています。
会社が自身の健康に投資してくれると感じることで、従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)は高まります。その結果、コミュニケーションが円滑になり、新たなアイデアが生まれやすくなり、組織全体の生産性が向上するのです。これは、一時的な残業やコスト削減による利益確保とは全く質の異なる、持続的な成長基盤の構築と言えます。
人材の獲得と定着は、現代の経営における最重要課題の一つです。ここでも健康経営は大きな力を発揮します。
従業員向けアンケートでは、勤務先が健康経営優良法人の認定取得に取り組むことについて、20代で54.5%、30代で53.0%が「賛成」と回答しており、若い世代ほどその価値を高く評価していることが明らかになりました。
これは、採用活動において「私たちは社員の健康を大切にする会社です」というメッセージを、国が認める客観的な証拠と共に発信できることを意味します。結果として、求職者からの応募が増え(認定取得効果の34.3%が実感)、採用のミスマッチが減り、早期離職を防ぐことができます。一人あたりの採用・教育コストが数十万~百万円以上かかることを考えれば、その費用対効果は計り知れません。
これまでのデータをまとめると、「健康経営」とは、①企業の売上を直接的に押し上げ、②従業員の生産性を高め、③採用と定着の課題を解決する、極めて合理的な「戦略的投資」です。
目先のコストに囚われるのではなく、5年後、10年後の持続的な成長のために、今こそ健康経営への投資を始めてみませんか?
【情報源】
・帝国データバンク「健康経営に関する企業の取り組み状況や効果に関する調査分析(企業アンケート・従業員アンケート)」
・経済産業省 健康経営優良法人認定事務局「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定法人一覧」