【健康経営の新常識】プレゼンティーイズムとは?測定方法と4タイプ別改善策を専門家が徹底解説

この記事のポイント

  • 「出社はしているが不調で生産性が低い状態(プレゼンティーイズム)」が、欠勤よりも大きな経済的損失を生む理由がわかる。
  • 科学的根拠のある指標(SPQ・WFun)を用いた測定ツールで、自社の状況を客観的に把握できる。
  • 測定結果を4つのタイプに分類し、明日から実践できる具体的な個人・組織の対策がわかる。

「社員は出社しているのに、なぜか組織の活気がない…」
「リモートワークが普及し、従業員のコンディションが見えにくくなった…」

健康経営を推進する中で、こうした漠然とした課題感をお持ちではないでしょうか。その原因は、近年注目されている**「プレゼンティーイズム」**にあるかもしれません。

第1章:いまさら聞けない「プレゼンティーイズム」の基本

プレゼンティーイズムとは、何らかの健康問題(肩こり、睡眠不足、メンタル不調など)を抱えながら出勤し、本来発揮できるはずのパフォーマンスが低下している状態を指します。

病気で会社を休む「アブセンティーイズム(欠勤)」とは異なり、本人は出社しているため、周囲からも本人からも問題として認識されにくいのが特徴です。

しかし、複数の調査研究により、プレゼンティーイズムによる企業の経済的損失は、アブセンティーイズムによる損失の数倍にのぼることが指摘されており、企業の生産性を静かに蝕む「見えないコスト」として問題視されています。

第2章:なぜ測定が必要?データに基づいた健康経営への第一歩

「測れないものは改善できない」――これは、経営における鉄則です。プレゼンティーイズムを測定することで、初めて組織の健康課題を客観的に把握し、的を射た対策を講じることができます。

測定によって、①課題の客観的把握、②施策の効果検証、③経営層への説明責任、といったメリットが得られ、健康経営を戦略的に推進する土台が築かれます。

これからご紹介するツールは、個人の労働生産性を簡潔に測定する「SPQ(東大1項目版)」と、心身の不調が仕事の機能に与える影響を多角的に測定する「WFun(産医大版)」という、信頼性の高い指標を統合しています。

第3章:【実践】あなたの会社の状況を把握する「統合測定ツール」

それでは、実際にツールを使って現在のあなたの状態を測定してみましょう。ご自身の率直な感覚でお答えいただくことが、最適なアドバイスに繋がります。個人の結果が許可なく他者へ共有されることはありませんので、ご安心ください。

プレゼンティーイズム(生産性低下)
統合測定ツール

この診断は、ご自身の仕事のパフォーマンスと心身のコンディションを客観的に振り返り、より快適に働くためのヒントを得ることを目的としています。

【重要】この診断は他人との比較や人事評価が目的ではありません。ご自身の率直な感覚で回答いただくことが、最適なアドバイスに繋がります。「100%」とは、他人と比べた完璧な状態ではなく、ご自身が最も調子が良かった時の状態を指しますので、安心してお答えください。個人の結果が許可なく他者へ共有されることはありません。

診断でわかる4つのタイプ

この診断では、2つのステップの回答を組み合わせ、あなたの現在の状態を4つのタイプに分類します。

労働機能
タイプC
タイプB
タイプA
タイプD
パフォーマンス自己評価 →

ステップ1:パフォーマンスの全体評価

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本診断の科学的根拠について

本ツールは、信頼性の高い以下の学術的指標に基づき開発されています。

  1. SPQ (東大1項目版): 東京大学政策ビジョン研究センターのワーキンググループが開発した、個人の労働生産性を簡潔に測定する指標です。
  2. WFun (産医大版): 産業医科大学で開発された、心身の不調が仕事の機能(労働生産性)に与える影響を多角的に測定する指標です。
※本診断は自己理解を助けるためのツールであり、医学的な診断に代わるものではありません。

第4章:結果をどう活かす?4タイプ別・次の一手と企業の関わり方

診断お疲れ様でした。測定はゴールではなく、改善へのスタート地点です。診断結果のタイプ別に、個人としてできること、そして企業として取り組むべき施策のヒントをご紹介します。

タイプA: 理想的な就業状態の方へ

個人:現在の素晴らしい状態を維持することが目標です。自身の強みや価値観を再認識し、新たな挑戦を続けることが更なる成長に繋がります。
組織:この層は組織のエンジンです。働きがいを感じ続けられるよう、適切な評価制度や挑戦機会の提供が、人材の定着(リテンション)に不可欠です。

タイプB: 頑張りすぎ注意(隠れ不調)の方へ

個人:責任感の強さが、不調のサインを見過ごさせているかもしれません。意識的に休息を取り、完璧主義を少しだけ手放す勇気を持ちましょう。
組織:バーンアウト(燃え尽き症候群)の最重要予備軍です。管理職による1on1での業務負荷の確認や、積極的な休暇取得の推奨が急務です。

タイプC: ポテンシャル発揮不全(環境要因)の方へ

個人:不調の原因は、あなた自身ではなく職場環境にある可能性が高いです。パフォーマンスを妨げている要因を整理し、上司に相談してみましょう。
組織:これは個人の健康問題ではなく、マネジメントの課題です。エンゲージメントサーベイや職場環境改善ワークショップ等で、働きやすさを阻害する要因を特定・改善する必要があります。

タイプD: コンディション起因(要回復・サポート)の方へ

個人:今は何よりも心と身体の回復を最優先してください。会社の相談窓口や産業医など、利用できるサポートは積極的に活用しましょう。
組織:この層へのサポート体制は、企業の健康経営への姿勢そのものです。安心して休める風土の醸成、相談窓口の周知、復職支援プログラムの整備が求められます。

まとめ:プレゼンティーイズム測定から始める、戦略的健康経営

プレゼンティーイズムの測定は、従業員の健康状態という「見えない資産」を可視化し、企業の持続的な成長に繋げるための重要な第一歩です。

今回の診断結果をきっかけに、従業員一人ひとりが自身の働き方を見つめ直し、組織全体で「より健康で、より生産性の高い職場」を目指していきましょう。

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【監修】
ウェルネスドア合同会社 代表 狩野 学(かりの まなぶ)
エキスパートインサイト 専門家チーム