「時間やコストをかけて育てた若手社員が、数年で辞めてしまう…」
多くの経営者や人事担当者が、このような悩みを抱えています。「最近の若手は忍耐力がない」と片付けてしまうのは簡単ですが、問題の本質はそこにはありません。彼らは、自身のキャリアや人生において「ウェルビーイング(Well-being)」、つまり身体的・精神的・社会的に良好な状態を、上の世代以上に重視しているのです。
この記事では、Z世代のリアルな本音をデータで解き明かし、彼らに選ばれ、長く活躍してもらうための「ウェルビーイング経営」について解説します。
私たちは、従業員1,000名を対象としたアンケート調査を実施しました。そこから見えてきたのは、若手世代の切実な声です。
勤務先が「健康経営優良法人」の認定取得に取り組むことについて、20代で54.5%、30代で53.0%が「賛成」と回答。これは、40代(46.0%)や50代(42.5%)を大きく上回る数字です。
彼らは、単に給与や待遇が良いだけでなく、「会社が自分の心と身体の健康を大切にしてくれるか」を、企業選びの重要な基準としているのです。
また、会社に期待する取り組みとして、「メンタルヘルス対策の充実」や「柔軟な働き方の導入(フレックスタイム、時間単位休暇など)」が上位に挙がりました。長時間労働の是正といった”マイナスをゼロにする”取り組みだけでなく、個々の幸福度を高める”ゼロをプラスにする”施策が求められていることがわかります。
では、具体的にどのようなアプローチが若手の心に響くのでしょうか。明日から実践できる2つのポイントをご紹介します。
Z世代は、自分の意見が尊重され、安心して挑戦できる環境を求めます。専門のカウンセラーに相談できる窓口を設置するのはもちろん、上司との定期的な1on1ミーティングを制度化し、「業務の話」だけでなく「キャリアやプライベートの悩み」も気軽に話せる場を設けることが極めて重要です。これにより、メンタル不調の早期発見だけでなく、エンゲージメントの向上にも繋がります。
画一的な福利厚生ではなく、個々のライフスタイルや価値観に合わせて選択できる制度が好まれます。例えば、カフェテリアプラン(与えられたポイント内で、自己啓発、リフレッシュ、健康増進など好きなメニューを選べる制度)の導入は有効です。また、「体調が優れない時に半日だけ休む」といった時間単位の有給休暇制度は、心身の健康維持に直結する人気の高い制度です。
重要なのは、これらの制度を導入する際に「なぜこれを行うのか」という経営者の想いやビジョンをしっかりと発信することです。「私たちは、社員一人ひとりのウェルビーイングを本気で考えている」というメッセージが伝わった時、若手社員は初めて会社への信頼と貢献意欲を高めるのです。
若手社員の離職は、単なる労働力不足以上のものを会社から奪います。それは、新しい視点、活気、そして未来の可能性そのものです。
彼らのウェルビーイングに投資することは、目先のコストではなく、イノベーションが生まれやすい企業文化を育み、持続的な成長を実現するための最も確実な戦略です。貴社も「選ばれる会社」になるための一歩を踏み出してみませんか?
【情報源】
・帝国データバンク「健康経営に関する企業の取り組み状況や効果に関する調査分析(従業員アンケート)」