管理職への昇進など、キャリアの円熟期を迎える40代から50代。しかし、この重要な時期に多くの女性従業員が、心身の急激な変化という見えない壁に直面しています。それが「更年期」です。
「個人の体調の問題」と片付けられがちなこの課題が、実は4割以上の当事者に退職を考えさせ、貴重な人材を失う原因となっているとしたら、それはもはや個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき経営課題ではないでしょうか。
この記事では、データが示す「更年期の壁」の深刻な実態と、企業が優秀な人材を失わないために今すぐできる具体的な対策について、深く掘り下げて解説します。
更年期症状は、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少によって引き起こされます。一般的に知られるホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)や発汗だけでなく、その症状は多岐にわたり、仕事のパフォーマンスに深刻な影響を与えます。
特に注意したいのが、思考力や集中力が低下する「ブレインフォグ」と呼ばれる症状です。「会議の内容が頭に入ってこない」「簡単な言葉が思い出せない」「企画書をまとめるのに普段の倍以上時間がかかる」といった状態に陥り、本人も「能力が落ちたのではないか」と深刻に悩み、自信を失ってしまいます。
その他にも、気分の落ち込み、不安感、不眠、関節痛、疲労感など、多種多様な症状が日替わりで現れることもあり、経済産業省の調査では、症状がある時のパフォーマンスは平均で約47%も低下するという結果が出ています。
これほどの不調を抱えながら、なぜ従業員は誰にも相談できずに離職を選んでしまうのでしょうか。背景には、日本の職場特有の課題があります。
経験豊富なベテラン従業員を失うことは、企業にとって計り知れない損失です。しかし、適切なサポート体制を築くことで、「更年期の壁」を乗り越え、さらに活躍してもらうことは十分に可能です。
更年期への正しい理解と支援は、当事者である女性従業員を守るだけでなく、組織全体の心理的安全性を高め、誰もが長期的に安心して働ける企業文化を育みます。
それは、すべての従業員のエンゲージメントを高め、企業の持続的な成長を支える「未来への投資」です。
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【主な情報源】
・経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」