「最近、女性部下のパフォーマンスに波があるように感じる…」
「体調が悪そうだが、何と声をかければいいか分からない」
多くの男性管理職が、このような悩みを抱えています。一方で、男性側も「セクハラと誤解されたくない」「プライベートな問題にどこまで踏み込んでいいのか…」といった理由から、積極的に関わることに強い"ためらい"を感じているのが実情です。
この「言えない・聞けない」というコミュニケーションの壁は、男女どちらか一方の問題ではありません。この記事では、壁の正体を解き明かし、男女双方が歩み寄り、企業がそれを支援するための具体的な方法を専門家の視点から解説します。
まず認識すべきは、女性特有の健康課題がもたらす影響は、決して「個人の問題」で済まされないという事実です。
経済産業省の調査によれば、月経随伴症状(PMSなど)による生産性の低下や欠勤などがもたらす労働損失は、年間で約4,911億円にも上ると試算されています。また、更年期症状を理由に、管理職への昇進を辞退したり、離職を考えたりする40代・50代の女性も少なくありません。
経験豊富な人材のパフォーマンス低下や離職は、代替のきかない大きな損失です。これは、組織として対策を講じるべき、紛れもない**「経営課題」**なのです。
男性側の「無理解」と、女性側が相談を諦めてしまう「すれ違い」は、静かに、しかし確実に組織を蝕むリスクとなります。
「気の持ちようだ」「自己管理が足りない」といった悪意のない一言が、意図せずパワーハラスメントと受け取られる危険性があります。知識不足からくる不適切な言動は、法的なリスクにも直結します。
「この上司・この職場ではキャリアを続けられない」という諦めは、優秀な女性従業員のエンゲージメントを著しく低下させ、離職につながります。特に経験豊富なミドル層の離職は、組織にとって計り知れない損失です。
個人の不調だけでなく、「体調について安心して相談できない」という職場全体の雰囲気は、心理的安全性を低下させます。その結果、チーム内のコミュニケーションが停滞し、組織全体の創造性や生産性を阻害するのです。
この問題の根源には、男女それぞれの立場から生じる、構造的な「壁」が存在します。
この根深い壁を乗り越えるには、個人の歩み寄りと、それを支える企業の仕組みづくりが不可欠です。
【男性管理職へ】まずは知識を学ぶことに加え、「体調は仕事のパフォーマンスに影響するから、必要な配慮は一緒に考えたい」という、**マネジメントとしてのスタンス**を明確に伝えましょう。「何かサポートできることはある?」とオープンに問いかける姿勢が、信頼関係の第一歩です。
【女性社員へ】男性側の「関わりづらさ」を理解した上で、「PMSによる頭痛で集中しづらいため、可能であれば1時間在宅勤務に切り替えたい」など、**「状態」と「希望する配慮」をセットで**具体的に伝えてみる工夫が、円滑なコミュニケーションを助けます。
個人の努力任せには限界があります。企業は、安心して対話できる「土壌」を整備する責任があります。
女性の健康課題への理解は、単なる「優しさ」ではありません。
それは、男女間の相互理解を促し、すべての従業員が能力を最大限に発揮するための**「戦略的マネジメント」**です。
「何から始めればいいかわからない」「管理職の意識改革を進めたい」
ウェルネスドアでは、男女合同で学べる健康リテラシー研修や、心理的安全性を高めるマネジメント研修をご提供しています。
【主な情報源】
・経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」